ハイマツ帯

たまに更新できればいいな

ねずみと猫

 木曜日に出向者の先輩と二人で深夜残業をしていると、唐突に先輩が「おめでとうな」と言った。一瞬なんだろうと思ったのちふと時計を見ると日付が変わっていた。誕生日であった。今まで誕生日自体についてこれといった記憶が無いのだが、職場で迎えたことで、また、その後なぜか四時前まで仕事していたことも含めて、印象に残る誕生日となった。

 四時前まで働いてたことがトリガーとなったかは不明だが、金曜日は出張の代休で家でのんびりしていた私に、直属の上司から「今後は深夜残業を厳しく制限していく」という割と厳しめのメールが届いた。それを見て、困る、と思った自分を発見して驚いた。あれほど長時間残業にうんざりし、とにかく仕事を減らしてほしいと思っていたにも関わらず。制限時間を超えた分の残業時間がちゃんと計上されなくなったり、あるいは任せられた仕事を終えられないと他部や役員から怒られるのは自分であるという理由があったりするにせよ、おそらく多少は仕事の割り振りが減るはずなのに。不思議な感情である。何を言う。何を言う。何が不思議かねお前はそういう長時間残業の状態を結構楽しんでいたのではないかね。長期間に渡る仕事を終えて部長に一言お疲れさまでしたと言われた時、あるいは海外出張を終えて家に帰ってきて床に寝転がった時、誇らしい気持ちにならなかったかね。自分を周りよりも正しくがんばっているものとして密かに自負していただろう。そして長時間残業が正義であるという風潮の再生産に貢献していたのではないかね。いえいえいえいえいえ。私が長時間残業を肯定しているように見えるのは、一種の自己防衛である。すなわち先輩方の「長時間残業をこなすことで成長できるんだよ」という言葉を信じ込む演技をすることで、苦しい労働に耐えられるように自分に対して偽装していたにすぎない。そのうち仕事をやめる時が来たら長時間労働についての文句も伝え、会社の労働状況を変える一助にするつもりであるよ。いやいやいやいや。ところがどっこい。まぁまぁ。様々な意見があるであろう。本当の自分などというものはどこにも無いか、もしくは無数にあるのである。

 

 はてなブログ開設から四年が経過しましたというメールが届いた。四年前。「お前の好きなようにやったらええやん!」などという言葉をたまに思い出したりする。

 このブログを作ったのは、さかこ氏のブログが面白く、真似したいと思ったからであった。ハイマツ帯というタイトルは、なんか山関係で面白い単語をタイトルにしようと思って、なんとなく浮かんできた言葉である。ハイマツ帯というのは遠くから見ると割ときれいだが、実はその中を藪漕ぎして突破しようとすると異常に苦しい。私のいた部活では道の無い尾根の藪漕ぎをして知床岬まで到達するという合宿をたまにするが、その中のハイマツ帯には時速100mしか進めないという「伝説の藪」が存在する。

 適当につけたタイトルだが、その後割と気に入った。きつい藪をがんばって進んでいって、その先には何があるかというと徒労にも似た達成感だけなのだが、確かに何かしら得られるような感じはする。しかしこの四年間がんばって藪を越えてきたかというとそんなこともなく、基本的にいつも自分の心の平穏を守ることを優先していたのだった。難しい沢に行って厳しい環境に身を置くことにすら、楽しく平和な日常を改めて確固たるものにするという強い理由が存在していたのだった。

 ともかく、ブログをやっていていろいろなことがあった。楽しい。なのでブログをやっていて良かった。