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ハイマツ帯

たまに更新できればいいな

北アルプス②

9/28

 朝4時に起きる。朝飯はたしかサッポロ一番にワカメを入れて食べた。ダラダラ準備してたら出発まで1時間45分くらいかかった。ここらへんの適当さは沢メンっぽさが息づいていると思われる。

 朝一の登りがきつく頻繁に止まる。今日もすばらしい快晴だし、昨日までにつらい行程を終わらしていたので気楽だ。大天井岳までの道は本当に快適かつきれいで、ひたすら楽しかった。燕岳までの道も同様だった。来てよかった。あまりに快適で特に事件も無かったので燕岳直下まで話を飛ばす。

 燕岳直下には昼前についてテントを張る。ここは山ガールがいっぱいいた。ただし大体男を装備しているので注意が必要だ。今回の山行全体を通して山ガールはたまにいたがヤマノススメみたいなpartyは残念ながら皆無であった。50代くらいの山ガールはいっぱいいる。

 テントでちょっと昼寝してから燕岳まで往復する。地面が白くてやたらきれいだ。花崗岩が風化したものらしい。燕岳は白と緑と黄のコントラストが美しく、なんというか若い女性のごとき山である。ちなみに槍ヶ岳なんかはシュッとしたイケメンといった趣の山である。穂高岳はごついイケメンだろうか。これらは人気がある。北に行って白馬岳なんかは優雅な女性といった感じの緩やかできれいな山だ。もっと行って朝日岳はちょっとむさくるしい雰囲気が出てくる。さらに北に進んで犬ヶ岳とか1241ピークとかになると我々のごとくオタクっぽくて汚らしい人気の無い山ということになるのである。

 まあそんなことはどうでもよく、ともかく燕岳はきれいな山であった。テントに戻ると僕のテントにすぐ下に若い女性二人のテントが張られていた。僕は若い女性が苦手なことで有名であるのでその後テントの外に出づらくなった。まだ時間が早いのでワインを飲み始める。ベーコンを焼いてつまみにしたがあまりにおいしくてビックリした。あまりにおいしいので1パック食べつくし、さらに夕食用のも半分くらい食べてしまった。もうあとは明日降りるだけなので気楽なことこの上ない。

 昼寝とワインと読書を交互に繰り返していたら暗くなってきたのでサッポロ一番にワカメとベーコンを入れて夕食にした。特に眠くないので本を読んでいたが北杜夫が終了したので世に棲む日々(司馬遼太郎)を読む。高校時代司馬遼太郎を読みあさっていた頃はあまり気にならなかったが、最近読み返してみるとどうも作者の設定した類型の中に人物の行動を当てはめようとする姿勢が強すぎるように感じることが多い。ある程度歴史小説の必然なのかもしれないが。

 9時か10時頃、テントを抜け出した。標高2,700mくらいということで相当寒い。ブルブル震えつつ峠までちょっと登る。月は小さく、本当に星がよく見えた。大小の星が連なる姿を見るとそれは筆で白く一塗りしたようでもある。じっと眺めていると夜空が近いような遠いような、あるいは迫ってくるような遠ざかっていくような、なんとも言えぬ空との一体感があり面白かった。寒さも忘れてしばし眺めたのち、東の方角を見てみると、この日は雲が薄いこともあって安曇野、松本の夜景がささやかに美しく輝いていた。昨日には人里への思いを駆り立てたこの風景も、今日見てみるとただひたすらきれいで、むしろここからこの風景を眺めることができなくなることが悲しくて仕方なかった。かくして、昨日あれほど疲れ果て嫌気がさしたにもかかわらず、また山に来る羽目になるのである。

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9/29

 ついに下山の日だ。何も考えず山で疲れ果てる楽しさと人里への恋しさが入り混じったなんとも言えないあの感覚がやってくる。朝飯はたしか抹茶ラテで済ました。暗いうちに準備を済ませて出発する。途中、見晴らしの良いところで日の出を見る。雲海がすばらしい。もうしばらくはこんな光景を見ることも無かろう。しばし立ちつくして見ていた。日が昇り下山は加速し、急な降りだが特に問題は無い。途中の小屋を通過し、ベンチも越えると終わりは近く、ここまで来ると早く降りたいと思いがどんどん強くなる。温泉の建物が見えて、あとは走るように降っていき、ついに下山した。

 とりあえず臭すぎるTシャツと靴下を代えのものと交換する。久しぶりに携帯を見てみると御岳の噴火で心配のメールが来ており、某所では僕の死亡説が流れていたりした。バスで穂高駅に行き、電車までコスモスを愛でたり散歩したりして時間をつぶしたのち松本へ戻る。駅の定食屋に入り山賊焼き定食とビールを頼んだ。久しぶりのビールは大変大変おいしく、はぁぁ・・・と声が漏れ体の力が漏れ出ていくのであった。

 着替えを回収して浅間温泉に行く。なんでも昔、旧制松本高校の学生は浅間温泉まで風呂に入りに行くのが伝統であったらしい。バスで少し行って降りるが、すぐにスーパー銭湯のごとき温泉がある。やはりかようなところに行くのはセンスが無いだろう。微妙に高いし。適当に歩いて見つけた古臭くてまともに営業してるか怪しい旅館の風呂に入らせてもらう。ここは安いし他にまったく客もいないしなかなか良いところだった。体を洗って湯船に浸かるとようやく生き返った気がした。これは単に気持ち良くて元気が出たということではなく、それまでは臭すぎて人権が認められていなかったということである。

 体も精神もすっきりとして古い温泉街を歩く。空はなお青く、雲もほとんどない。はるかに広がる山並みを見ていると、ほんの数時間前までそこにいたにも関わらず、かの美しき稜線の様子がもうずっと前のことのように思い出された。そして、ようやく、もう終わったのだなということが実感されてきたのであった。

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